電動高所作業車を借りるか買うか。得か損かは、実は「年間の使用日数」でほぼ決まります。使う日数が少なければレンタル、多ければ購入が有利になりやすい、という関係です。だからこそ、損益分岐となる使用日数を出せば、自社の現場でどちらが得か自分で判断できます。目安としては年20〜30日前後が分岐帯になりやすいところですが、これは前提しだいで動く目安であり、断定できる数字ではありません。この記事では、その分岐点を自分で計算する式まで示します。

この記事で分かること
- レンタルと購入の損得が「年間使用日数」で決まる理由
- レンタル料金の目安(作業床の高さ別・1日あたり)と、見落としがちな別途費用
- 購入価格の目安(新車・中古)と、毎年かかる維持費の中身
- 損益分岐点を出す計算式と、新車・中古それぞれの試算例
- 自社の数字で計算する手順と、使用頻度別のケース分け
- 金額以外に見ておくべき判断軸(保管場所・点検の手間・繁忙期のリスクなど)
この記事の対象者
電動高所作業車を「借りるか買うか」で迷っている中小事業者・現場責任者・経営者の方を対象にしています。建機の専門家ではなく、自社の使い方でどちらが得かを数字で判断したい方に向けて、計算の考え方から順に説明します。
まず結論:判断のカギは「年間の使用日数」
レンタルは「使った日数ぶんだけ払う」費用です。使えば使うほど積み上がります。一方、購入は「最初に買う費用」と「毎年の維持費」が中心で、日数が増えても大きくは変わりません。
つまり、使用日数が少ないうちはレンタルが安く、ある日数を超えると購入のほうが安くなります。その境目が「損益分岐点」です。
- 年に数日だけ:レンタルが得になりやすい
- 年20〜30日前後:ちょうど分岐帯。条件しだいで逆転する
- 月に数回〜毎週の常用:購入、特に状態の良い中古が有利になりやすい
以降で、レンタルと購入それぞれの費用を分解し、最後に自分の数字を入れられる計算式を示します。
レンタル料金の目安(作業床の高さ別・1日あたり)
まずレンタルの相場です。作業床の高さが上がるほど、日額も上がります。以下はトラック式を含む一般的な目安で、地域・機種・時期で変わります。
| クラス(作業床の高さ) | 1日あたりの目安 |
|---|---|
| 9mクラス | 約22,200〜44,000円 |
| 12mクラス | 約22,000〜60,000円 |
| 17mクラス | 約40,000〜75,000円 |
| 22mクラス | 約45,000〜80,000円 |
| 27mクラス | 約65,000〜150,000円 |
| 30m以上 | 約130,000〜175,000円 |
屋内向けの小型電動自走式(シザースリフトなど)は、機種により概ね1万〜2万円台/日から、というレンタル各社の例もあります。これも機種・地域で変動します。
なお、週単位・月単位で借りると、日割り単価が下がる長期割引が一般的です。ただし割引率は各社・機種で異なるため、実際の見積もりで確認してください。
見落としがちな「別途費用」に注意
レンタルは「日額×日数」だけで判断すると、実際の支払いより安く見積もってしまいます。次のような費用が別途かかりやすいためです(金額は会社・機種で変動します)。
- 回送費・搬送費:現場まで機械を往復で運ぶ費用
- 補償制度(免責補償)料:万一の故障・破損に備える料金
- 時間外・休日対応料金:早出・残業・夜間・土日祝の割増
- 燃料/充電・メンテナンス料など
とくに搬送費は、短期・少日数のレンタルほど1日あたりの負担として重くのしかかります。比較するときは、日額だけでなくこれらを足した「総額」で見るのが正解です。
購入の目安(新車・中古)
次に購入です。あくまで一例で、機種・状態で変わります。
- 新車(電動シザースリフト):おおむね250万〜460万円程度
- 中古:機種・状態・バッテリー残存で大きく変動。新車の半額前後〜が一つの目安ですが、状態しだいで動きます
中古で最も価値を左右するのがバッテリーの状態です。電動は充電池で動くため、劣化が進んだ機体は稼働時間が短く、交換費用の負担も見込む必要があります。中古を選ぶ際の見極め方は、既存記事「中古の電動高所作業車を買う前に確認すべき7つのポイント|現場目線で解説」「電動高所作業車のバッテリー交換|費用・交換タイミング・業者選びのポイント」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。
購入後にかかる「維持費」も試算に入れる
購入は買って終わりではありません。毎年の維持費を計算に入れないと、正しい比較になりません。
- 特定自主検査(年次点検):外注で概ね2.5万〜5万円/年(小〜中型の目安)。法定の年次点検です
- 月例点検・作業開始前点検:自社で行えば実質は人件費のみ(資格は不要)
- バッテリー交換:数年ごとに発生する電動特有の大きめ費用。試算では「年あたりに按分」して計上します
- 保管場所・保険・その他:保管スペース代、任意保険など
- 修理・部品:経年で消耗する箇所は多くありませんが、修理が発生した場合は大きな費用になります。ただし、発生時期や金額を事前に予測することはできません
以上をまとめると、年間の維持費は例として15万〜20万円程度を見込むケースが多くなります。これも前提しだいで変わる目安です。

頻度別シミュレーション:損益分岐を計算してみる
ここが記事の核心です。以下はすべて前提を仮定した「例」であり、断定できる数字ではありません。前提を変えれば結果も変わります。まず考え方の式を示します。
- 年間レンタル費 = 日額 × 年間使用日数(+搬送費など)
- 年間保有費 = 購入費 ÷ 耐用年数 + 年間維持費
この2つが等しくなる「年間使用日数」が損益分岐点です。共通の前提として、日額は18,000円(小型電動自走式の中位の仮定)とします。
例A:新車300万円で買う場合
前提を次のように置きます(あくまで一例)。
- 購入費:300万円/耐用年数:10年 → 年30万円
- 年間維持費:18万円(年次点検+バッテリー按分+保管・保険)
- 年間保有費の合計:30万円+18万円=48万円
損益分岐点は「48万円 ÷ 日額1.8万円」で計算します。答えは 48万円 ÷ 1.8万円 ≒ 約27日/年 です。つまり、この前提なら年間およそ27日以上使うなら購入が有利になりやすい、という結果になります。
例B:中古150万円で買う場合
同じ考え方を、状態の良い中古に当てはめます。
- 購入費:150万円/耐用年数:7年 → 年約21.4万円
- 年間維持費:18万円
- 年間保有費の合計:約21.4万円+18万円=約39万円
損益分岐点は 約39万円 ÷ 1.8万円 ≒ 約22日/年 です。中古は初期費用が下がるため、分岐点も約22日/年へと下がりました。同じ使用頻度でも、中古のほうが「買ったほうが得」になりやすいわけです。
| 前提 | 例A:新車300万円 | 例B:中古150万円 |
|---|---|---|
| 購入費 ÷ 耐用年数 | 300万円 ÷ 10年=年30万円 | 150万円 ÷ 7年=年約21.4万円 |
| 年間維持費 | 18万円 | 18万円 |
| 年間保有費の合計 | 48万円 | 約39万円 |
| 損益分岐点(日額1.8万円) | 約27日/年 | 約22日/年 |
試算を見るときの大事な注意
これらは前提を仮定した例です。日額・購入価格・耐用年数・維持費のどれかが変われば、分岐点も動きます。また、レンタル側に搬送費などを足せば、分岐点はさらに下がる(=より少ない日数で購入が有利になる)方向に働きます。
一方で、購入側も故障時の大きな修理費や、使わない期間の遊休コストは試算に含めていません。レンタル・購入どちらも簡略化した例である点にご留意ください。数字は自分の条件で入れ替えて考えてください。
自分の現場で計算する手順
上の式は、そのまま自社の数字に置き換えられます。次の手順で試算できます。
- 年間の使用日数を数える(過去1年の現場を振り返る)
- 年間レンタル費を出す:日額 × 使用日数 + 搬送費など
- 年間保有費を出す:購入費 ÷ 耐用年数 + 年間維持費
- 2と3を比べ、保有費のほうが安ければ購入寄り、と判断する

使用頻度別のケース分け
計算が面倒な方向けに、目安の早見も置きます。あくまで傾向で、実際はご自身の数字で確かめてください。
| 年間の使用頻度 | 向いている選択 | ポイント |
|---|---|---|
| スポット利用・年に数日 | レンタル | 保管や点検の手間もかからない |
| 年20〜30日前後 | 損益分岐帯 | 搬送費が多くかかる、毎回同じ機種を使う場合は購入寄り |
| 常用(月数回〜毎週) | 購入 | とくに状態の良い中古なら分岐点が下がるぶん効果的 |
数字だけで決めない。もう一つの判断軸
損得は金額だけでは決まりません。次の点もあわせて考えると、後悔のない選択ができます。
- 保管場所の有無:置き場がなければ購入のハードルが上がる
- 点検・資格者手配の手間:所有すると点検管理が自社の負担になる
- 最新機種を使える利点:レンタルなら常に新しめの機種を選べる
- 繁忙期に借りられないリスク:需要が集中する時期は希望機種が押さえられないことも。所有ならいつでも使える
- 経費計上・減価償却の違い:レンタルは費用計上、購入は資産計上して減価償却する扱いが基本。税務・会計の判断は必ず顧問の税理士に確認してください
よくある質問
Q:たまにしか使わないのですが、それでも購入を考えるべき?
年に数日程度のスポット利用なら、レンタルが得になりやすいです。保管や点検の手間もかかりません。まずは上の式で自分の年間使用日数を当てはめてみてください。
Q:中古購入とレンタルの分岐点は何日くらい?
例Bの前提(中古150万円・耐用7年・維持18万円・日額1.8万円)では約22日/年でした。ただしこれは仮定した例で、価格や維持費が変われば動きます。目安として捉えてください。
Q:購入したら点検は自分でやるの?
月例点検・作業開始前点検は資格不要で自社実施できます。年次の特定自主検査は外注が一般的です(概ね2.5万〜5万円/年の目安)。詳しくは既存記事「電動高所作業車の年次点検・特定自主検査は義務?罰則と費用の目安」をご覧ください。
Q:レンタルの搬送費はどれくらいかかる?
回送費・搬送費は会社・機種・距離で変わるため、一律には言えません。短期・少日数ほど1日あたりの負担が重くなる点に注意し、必ず見積もりで確認してください。
Q:中古は状態が不安。何を見ればいい?
電動は特にバッテリーの状態が重要です。稼働時間や交換履歴を確認しましょう。見極め方は既存記事「中古の電動高所作業車を買う前に確認すべき7つのポイント|現場目線で解説」「電動高所作業車のバッテリー交換|費用・交換タイミング・業者選びのポイント」で解説しています。
まとめ|まず自分の「年間使用日数」を数えよう
レンタルと購入の損得は、年間の使用日数でほぼ決まります。判断の手順はシンプルです。
- 過去1年で何日使ったかを数える
- 「日額×日数+搬送費」と「購入費÷耐用年数+維持費」を比べる
- 分岐帯(目安で年20〜30日前後)を超えて使うなら、購入、とくに状態の良い中古を検討する
この記事の分岐点(約27日/約22日)は前提を仮定した例です。ご自身の数字で計算し直すことが、いちばん確かな判断になります。
参考・出典
- 高所作業車の1日のレンタル料金相場(レント) https://www.rent.co.jp/media/koushosagyousha/rental-fee-for-high-altitude-work-platform/
- 電動高所作業台のレンタル(南部興産) https://e-nambu.com/rental/heightwork/h-workbench.html
- 高所作業車(屋内用)(三共リース) https://www.sankyolease.co.jp/c13_c.html
- 自走式高所作業車のおすすめ・価格(ビルディ) https://www.bildy.jp/jobsite/c2972c2977c3660/
- 高所作業車の種類一覧(レント) https://www.rent.co.jp/media/koushosagyousha/aerial-work-platform-kinds/
- 法令・資格・点検の根拠は既存記事「電動高所作業車の年次点検・特定自主検査は義務?罰則と費用の目安」に準拠しています。税務・会計の扱いは顧問税理士にご確認ください。